そもそも行政書士って何をする人なの?意外と知らない行政書士について
意外と知らない行政書士の業務内容について
こんにちは。行政書士の杉浦です。
さっそくですが、みなさんは「行政書士」がどのような業務を行っているかご存知でしょうか。
なんとなくイメージできる方もいれば、全くイメージができない方もいるかと思います。
今回は、【意外と知らない行政書士の業務内容】をテーマにお話しさせていただきます。
行政書士の業務について
行政書士の業務は、大きく分けて次の3つに分けられます。
一.「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
二.「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
三.「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
と言われても、肝心な中身についてイメージが膨らまないと思いますので、なるべくかみ砕いて少しでも分かりやすいようご説明させていただきます。
一.「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
行政書士は、官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出する書類の作成、同内容の相談やこれらを官公署に提出する手続について代理することを業としています。その書類のほとんどは許可認可(許認可)等に関するもので、その数は1万種類を超えるとも言われます。
日本行政書士会連合会HP(行政書士の業務)より
また、許認可等に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為について、高い専門性を持つ行政書士が代理することにより、事務の迅速化等が図られ国民の利便に貢献しています。
また、行政書士は作成することができる書類の作成について相談に応ずることができます。 ※他の法律において制限されているものについては、業務を行うことはできません。
行政書士業務でよくイメージされるのは、この「官公署に提出する書類」いわゆる許認可手続きの代行や相談などではないでしょうか。
例えば、自動車を知人から譲り受けた場合などに、「自動車の移転登録」の手続きを運輸局にて行う必要があります。「自動車の移転登録」をするためには自動車を適切に保管する場所があることの証明として、管轄の警察署で「車庫証明書」を取得する必要があります。
このような「官公署に提出する書類」の作成・代理・相談などが行政書士業務となります。
「官公署に提出する書類」の作成・代理・相談業務は行政書士の独占業務であり、行政書士以外の人は、このような業務を行うことができません。※引用文の注釈にもあるとおり、他法令で他士業の独占業務になっているもの(例えば、法務局へ提出する書類作成・代理・相談業務は司法書士の独占業務。など)については、行政書士は行うことができません。
参考までに、主な士業の独占業務について簡単にまとめました。他士業の独占業務については行政書士は行うことができません。
社会保険労務士 | 労働及び社会保険に関する法令に基づいて申請書等を作成、手続きの代理や、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成することなどが社会保険労務士の独占業務となります。 |
司法書士 | 不動産登記や商業登記または供託に関する書類の作成、手続の代理などが司法書士の独占業務となります。 |
弁護士 | 紛争解決手続き、法律相談業、裁判書類の作成、刑事裁判の弁護人、民事裁判の代理人などが弁護士の独占業務となります。 |
弁理士 | 特許、実用新案等に関する特許庁に対する申請代行業務、実用新案等に関する権利もしくは技術上の秘密の売買契約等の代理などが弁理士の独占業務となります。 |
土地家屋調査士 | 不動産登記(表題部)の登記に関する書類の作成、手続きの代理などが土地家屋調査士の独占業務となります。 |
税理士 | 税務の代理や税務署類の作成、税務に関する相談対応などが、税理士の独占業務となります。 |
海事代理士 | 船舶のトン数測度に関する国際条約に基づく証書・確認書の手続きと測度に関する諸手続き、船員法に基づく船員の就業規則作成は海事代理士の独占業務となります。 |
「官公署に提出する書類」には、生活するうえで生じる一個人に関するものもあれば、法人の企業活動に伴い生じるものもあります。
書類作成から提出までが簡単であれば、「行政書士」の出番は少なくなると思います。
しかし、行政側も許認可等をしてもよいかを判断する必要があります。判断するためには、法令上の要件を満たしているか証明できる資料が必要であるため、どうしても申請書が複雑化したり、必要な添付資料が増えたりと、行政手続きが複雑になってしまいます。
そんな時に、許認可のプロである行政書士が書類作成および申請手続きを代理することで、適切に申請を行います。
また、行政手続きの中には、頑張れば自分で作成できるものも多く存在します。極論ですが、どの行政手続きも公開されている手引きを見ながら作成し、分からない部分を管轄の官公署に聞き取りをするなど、時間さえあれば自分でできるものがほとんどです。
行政書士業務ではありませんが、税務を例にお話しすると、税務についても自分で調べれば税理士先生にお願いしなくてもできるかと思います。ですが、限られた時間を有効に使うため税務については税理士へ委託し、自身は本来のコア業務に専念するといった判断をしている方は多いかと思います。
行政書士への依頼も同じようなイメージです。
また、「自動車の移転登録」などといった、一個人が生活をする中で必要となった手続きを行う場合、厄介なのは官公署が平日日中しか営業していないことです。例外はありますが、平日日中はお仕事をされている方が多いのではないでしょうか。1日で済むものであれば有給休暇を使うなどで対応できますが、複数日休まなくてはいけない手続きも存在します。このような場合も、行政書士が申請を代理し、必要な手続きを行います。
企業活動に生じる行政手続きの例としては、飲食店営業許可、酒類販売業許可、風俗営業許可、建設業許可、建築士事務所登録申請などがあります。
また、一個人に生じる行政手続きの例としては、自動車に関するもの(車庫証明、自動車登録など)、外国の方に関するもの(帰化許可申請、永住許可申請、在留資格認定など)、家を建てる時に必要なもの(建築許可、道路占用、水路占用、農地転用、公有財産の払い下げなど)があります。
このように、ひとことで「行政手続き」といっても、非常に多くの分野が存在し、業務をひとことで表せないことが、行政書士業務をイメージしにくくさせる原因なのではないかと思います。
ここまでが、「官公署に提出する書類」の説明となります。
二.「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
行政書士は、「権利義務に関する書類」について、その作成(「代理人」としての作成を含む)及び相談を業としています。
日本行政書士会連合会HP(行政書士の業務)より
「権利義務に関する書類」とは、権利の発生、存続、変更、消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類をいいます。
「権利義務に関する書類」のうち、主なものとしては、遺産分割協議書、各種契約書(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇傭、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)、念書、示談書、協議書、内容証明、告訴状、告発状、嘆願書、請願書、陳情書、上申書、始末書、定款等があります。
頭が痛くなりそうな言葉がズラーっと並んでいますね…
なるべくわかりやすくご説明いたします。
みなさんが思い浮かべる「権利」「義務」はどのようなものでしょうか。イメージを交えて簡単におさらいしましょう。
例えば、下の図の場合について考えてみましょう。
Aさんは10万円を支払え!と請求する「権利」、Bさんはチンアナゴ10匹を引き渡せ!と請求する「権利」を持っています。
反対に、Aさんはチンアナゴ10匹を引き渡す「義務」、Bさんは10万円を支払う「義務」があります。
このような権利を「債権」といい、義務を「債務」と言います。
では、この債権債務はいつ発生するのでしょうか。それは売買契約が成立した時です。
では、その売買契約はいつ成立するのでしょうか。それは、Aが売るけどどう?と申し入れをし、Bが買うよ!と伝えた時です。反対に、Bが売ってよと申し入れし、Aがわかったと伝えた時でも成立します。
つまり、申し入れに対し承諾があったときに契約は成立するのです。売買の内容が土地や建物といった不動産も同様に、書面によらず、口約束だけでも契約は成立します。
では、なぜ契約書が必要なのでしょうか。それは、後になって、売るつもりはなかった(買うつもりはなかった)と一方が言いだしたり、売買代金や数量について意見が食い違ったりすると問題になるからです。このような問題を避けるために、いつ、誰が、誰に対して、何を、いくらで、どんな条件で売買したのか(後払い、先払い、同時履行など)を明らかにしておくことが重要となります。
契約書として残すことは、言った言わないの水掛け論を防ぐために、非常に重要な役割を果たすのです。
今回は、売買契約を例にお話しさせていただきましたが、権利義務が発生したり消滅したりする意思表示は他にもたくさんあります。 そのような「権利義務に関する書類」の作成・代理・相談業務は行政書士が行う業務となります。
三.「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
行政書士は、「事実証明に関する書類」について、その作成(「代理人」としての作成を含む)及び相談を業としています。
日本行政書士会連合会HP(行政書士の業務)より
「事実証明に関する書類」とは、社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書をいいます。
「事実証明に関する書類」のうち、主なものとしては、実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)、各種議事録、会計帳簿、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表、申述書等があります。 他の法律において制限されているものについては、業務を行うことはできません。
事実を証明するための書類と読み替えれば分かりやすいかと思います。
例えば、会議の議事録の作成や、現地調査をした結果を図面として整理したものなどです。
そのような「事実証明に関する書類」の作成・代理・相談業務についても行政書士が行う業務となります。
行政書士独占業務ではないその他の業務について
前述させていただいた業務については、行政書士法に規定された行政書士業務(独占業務)となります。
ですが、これらの業務だけを行わなければいけないわけではありません。
むしろ、第一線を走っている行政書士の先生方はこれらの独占業務と何かしらを掛け合わせて他の行政書士事務所と差別化を図っているのではないでしょうか。
代表的な例としては、「許認可×経営コンサル」です。
既に一定の分野に専門を絞っている行政書士事務所では、その分野や業界の豊富な知識や経験を活かし、許認可等の行政手続きに加え、経営コンサルも併せて行うといったものです。
その他にも、新規事業の立ち上げに関する許認可に加えHP制作保守管理を代行したり、土地活用に関する許認可に加え図面作成や設計業務も行うなど、それぞれの行政書士事務所の特徴や得意分野を掛け合わせ、付加価値を見出すことでサービスの向上を図ることができます。
さいごに
今回は、行政書士の業務内容について記載させていただきました。
いかがでしたでしょうか。
行政書士は取り扱う業務の幅が広いのが特徴といえます。
同じ行政書士でも専門分野に違いがあるため、〇〇のことはA行政書士事務所にお願いし、●●のことはB行政書士事務所へお願いしている。といったことも起こり得るかと思います。
この記事を通して少しでも行政書士業務について知っていただけたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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